ネットワーク化する家電―その成功のカギは?

CNET Japan Innovation Conference 2009先月末にCNET Japanが主催したCNET Japan Innovation Conference 2009 ネットサービスで変革する情報機器・家電の世界(CJIC2009)に参加してきました。

ベンチャーの家電メーカーCerevoが開発中の、ネットワークサービスにリアルタイムにアップロードするカメラや、フリービットによるiPhoneをウェブサーバ化するServersManなど、各社の興味深い発表を見ることができました。

私たちユビキタス・コンピューティングの研究者は、ネットワーク化した情報家電による新しいサービスや付加価値を追い求めてきました。ですが、それらの成果が今一歩社会へ出ていかないという状況があります。その一方で、インターネットおよびウェブは生活のインフラとして着実に定着してきました。

一つの反省として、ユビキタス・コンピューティングはもっと今の現実のインターネットとの連携を指向するべきだと感じています。というのも、近年成功した情報家電は、基本的にネットワークサービスと連携するものだからです。

成功する情報家電はネットワークサービスの窓口

これまでソニーやパナソニックが電子ペーパーを搭載した優れた電子ブックリーダーを発売したにもかかわらず、普及したものはありませんでした。しかし、AmazonのKindleは今年だけで100万台を売るかもしれない勢いだということです。

Kindleを差別化している要素は何か、というと、携帯電話の3Gネットワークへの接続機能を最初から備え、PCを介さずにどこからでもAmazonのダウンロード販売サービスに直接接続して本を買えることです。また、その際の価格は紙の書籍を買うよりも安く設定されていることから、数十冊?100冊程度買うと本体の代金の元が取れるようです。

このAmazonのモデルは、明らかにこのブログでも何度も取り上げてきたiPod+iTunesのモデルを参考にしています。情報家電は、iTunesやKindle Storeのようなコンテンツ配信サービスと組み合わせられることで、高い付加価値を実現することができます。

例えば日本の電機メーカーは、共同でアクトビラというデジタルテレビ向けの動画配信サービスを提供しています。

窓口の先へ:アプリケーション・プラットフォーム

8月の最終週には、国内でウォークマンの週間売り上げシェアがiPodを抜いたという記事がありました。一方で、iPhoneやiPod Touchの売り上げは好調なようです。(同じ週の携帯電話端末売上ランキングで4位ロイターの記事

iPhoneやiPod Touchを他のiPodと分ける特徴はなんでしょうか。まず、3GまたはWi-Fiで直接ネットに接続する機能を持っていること。この点は、Kindleの成功と重なります。そして、より大きな違いとして、多くのアプリケーションが提供されるプラットフォームとなったこと。

この点で、ソニーのウォークマンがどれだけデジタルメディアプレーヤとしていい製品であろうとも、今のところ越えられない壁となっており、ウォークマンへのAndroid搭載という噂に信憑性を与えます。また、長期的にはKindleの成功を難しくするでしょう。

ネットワーク化する家電の競争優位

まとめてみます。ネットワーク化する家電は、まず可能な限りワイヤレスでのインターネット接続機能を持ち、コンテンツ配信サービスに直接接続できることが望ましい。さらに、そこでのコンテンツは、動画や音楽に留まらず、多くのアプリケーションも流通する。

興味深いのは、家電というハードの話をしているにもかかわらず、その競争優位をもたらすのはコンテンツ配信およびアプリケーションプラットフォームというソフトウェアおよびサービスであることです。