映画のことなど:2008年秋

めっきり冬らしい寒さになってきました。センチメンタルな季節にはセンチメンタルな映画。今年はヒューマン・ドラマのいい映画が多かったので、感想などを書いてみます。


僕らのミライへ逆回転

今のところ、DMCと並んで今年最も笑える映画。そして、今年最も泣けた映画。ジャック・ブラックとダニー・グローヴァーが出演して、消えてしまったレンタルビデオの代わりに自前で「ゴーストバスターズ」や「ロボコップ」のハンドメイド版を作る、このプロットだけで料金分くらいの価値は充分ある。しかし、映画は終盤、ただのコメディから意外な展開を迎える。ミシェル・ゴンドリーが、その才能は映像のトリッキーさだけでなく、脚本にもあることを示した、傑作。


P.S. アイラヴユー

仕事がうまくいかない不動産業の妻に「ボーイズ・ドント・クライ」「ミリオンダラー・ベイビー」のヒラリー・スワンク、なかなか職が長続きしないが魅力的な夫に「オペラ座の怪人」でファントムを演じたジェラルド・バトラー。どれだけ重たい夫婦なのかと思いきや、二人とも朗らかで魅力的な人物に描かれ、その分二人の運命の悲しさが胸を打つ。大切な人と一緒にどうぞ。


イントゥ・ザ・ワイルド

東部の裕福な家庭に育ち、成績も優秀で将来を約束された若者が、全てを捨て、放浪の旅の果てに、アラスカの山中で死体となって発見される。主人公の心の軌跡が、アメリカ各地の美しい風景の中で綴られていく。ショーン・ペンの円熟味を増した映画作りを堪能できる、映画好きにおすすめの一本です。


セックス・アンド・ザ・シティ

ドラマは見ていなかったが、同年代の女友達に、女心を知りたければ観ておけと言われて、行ってみる。観客も8割くらいは女性。恋あり、笑いあり、涙ありで、ドラマも見たくなるような娯楽映画の王道を行く作品でした。


20世紀少年 第一章

僕は「YAWARA!」「MASTERキートン」「MONSTER」などの浦沢直樹のマンガは大好きです。ですが、正直言って「20世紀少年」は大失敗作だと思います。何か事情があったのかと思うような、歯切れの悪い終盤。そのため、堤幸彦監督で映画化すると聞いたときは、マンガのリベンジを果たしてくれるという期待と、不安が半々でした。

結果は、というと、マンガの展開やコマ割りが、ほぼ正確に再現され、映画としてのメリハリも何もない。とても堤幸彦の映画とは思えない。おそらく原作者が口を出しすぎたのでしょう。3部作の続きは観にいかないつもりです。


クローバーフィールド/HAKAISHA

「エイリアス」「LOST」「ミッション・インポッシブル3」などで知られるJ.J.エイブラムス製作の、モンスターパニック映画。全編、逃げ惑う主人公達が持つハンディカメラのほぼワンカットの映像として見せるという斬新な手法がとられている。見ていて気持ちのいい映画というわけではないが、これまでにない映像であることは確か。


魔法にかけられて

御伽ばなしのプリンセスが、魔女によって「そして二人は幸せに暮らしましたなど決してあり得ない世界」、すなわち現実のニューヨークに送りこまれてしまい、現実主義の弁護士と出会って騒動を巻き起こす。タイトルには、本編を見ればわかるとおり二つの意味が込められています。ハリウッドらしい、小洒落たラブコメで楽しめます。

One thought on “映画のことなど:2008年秋”

  1. クローバーフィールドの何に感動したかっていうと、まず第一に映画の基本を抑えてたこと。最初のパーティのシーンで普通にドラマしてたでしょう?

    第二に911のトラウマを乗り越えたこと。しかも、監督には全くそのつもりが無いこと。あのビル崩壊の映像に覚えた不謹慎な興奮を忘れず、基本に忠実にエンターテイメント作品作ったことで、意図せずテロリストに対するリベンジを成し遂げてしまった。

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