シリコンバレーへ行ってみて、日本の20代に伝えたいこと

Route 101

今回シリコンバレーに行ってみて、20代〜自分と同年代くらいの日本の学生やIT技術者に伝えたいこと。もう日本ではなくあちらで働きたいと思いました。

彼我のIT技術者の働き方の違い

日本でIT技術者として働くことは必ずしも高い見返りを得られるものではありません。ゼネコン型の産業構造において、営業力とブランドに優れた元請けが利ざやを抜く一方、実際に手を動かす技術者は下請けとして言われたものを作ることに甘んじており、この構造によって技術的に面白い製品が生まれないことは、多くの識者および今回お会いしたベンチャー投資家の方からも指摘されました。

こちらで思うのは、技術の専門家が大事にされており、経済的な基盤もしっかりしているということです。スタンフォードの博士課程では、指導教官に受け入れてもらえれば学費も生活費も出してもらえます。というのも教授が大きな研究費を持っていること、および成功した事業家である場合も多く、学生もそうした事業の手伝いをすることで実務経験および生活費を得られるとのことです。

次に、就職してからも専門家の扱いは手厚く、僕の専門であるユーザインタフェースの分野でも30代半ばくらいの脂の乗ったマネージャーで年収が2000万〜3000万円とのことで、日本の同様の場合と比べると桁が一つ違います。おそらくエンジニアの場合も同様でしょう。この一点でも、バカバカしくて日本でIT技術者になる気がなくなります。

このような環境ができているのは、ベンチャービジネスの育成と投資の環境が整っているためです。成功した事業家が、成した財と経験を持ってベンチャー投資家になり、いいベンチャービジネスを見つければ迷わず投資して育てる。結果また成功する事業家が生まれる、という好循環が回っています。

日本の産業への危機感

一方で、日本への危機感はますます強くなりました。

日本の一人当たりGDPは世界で23位、スイスのIMDが発表する国際競争力ランキングで27位(これは韓国および政治的混乱の続くタイより下です)と落ち込んでしまいました。日本が経済競争力の高い国だったのは、すでに過去のことになりつつあります。

その理由の一つに日本人の内向き指向が影響していることは間違いありません。2004年に僕が初めてアメリカで国際学会発表をしたとき、日本人および中国人・韓国人も多く参加していました。しかし驚いたのは、自分を始め日本人は全員日本の研究機関から来ている一方、中国人・韓国人は全員アメリカの研究機関から来ており、危機感を覚えました。

近年海外に出て電気屋などにいくと、コンピュータ・デジタル家電において日本製品のプレゼンスは低くなるばかりです。アメリカ、ヨーロッパ、中国のいずれにおいてもサムスンやLGは人気があり電器店でも大きく売り出されていますが、日本メーカーはPCやケータイはほとんど見ませんし、かろうじてTVが少し残っているくらいです。

今回シリコンバレーに来ても、日本人でお会いできたのは40代以上の方ばかりで、30代くらいまでの若い日本人の学生や起業家があまりいないことに驚かされました。中国人やインド人はそこかしこにおり、実際ネットワークも充実しており、インド人コミュニティ内のビジネスコンテストなども開催されていると聞きました。日本人のネットワークは裾野の広がりも限られているようです。

中韓印では、アメリカなどで学んだり働いたりした優秀な人材が社会および経済の中核を担い、競争力を高めています。日本ではそのような人材が社会の中枢に取り立てられないという問題もあり、人が極めて内向きになり、海外で売れる製品を作れず、生産性も低いという状況を招いています。

結果的に日本の経済は停滞し、政治・行政も機能不全に陥り、特に国の借金がGDPの2倍という未曾有の状況で、これは財政破綻したギリシャを大きく上回ります。日本の財政破綻は5年程度の内に起こるという論者が増えています。仮にそれが起こった場合、まず円が紙くずになり、すると金融機関が破綻します。すると大手も含め企業が次々と倒産する可能性があります。また日本は食糧やエネルギーの大半を輸入に頼っているため、円が暴落するとそれらの供給が難しくなり、生活も破綻します。

このような状況の中で、技術者として日本にひきこもっていることは、あまりにもリスキーだと言えます。自分から好きこのんで破綻寸前の国家で、安い賃金で、主体性のない仕事をしたいのであればそれも良いでしょう。しかし、僕は今回個人で2週間ほど行ってきただけで、3件ほどのプロジェクトのオファーを受けました。シリコンバレーはもちろん競争の激しい環境ですし、すべての人にすぐに行けと言えるわけもありませんが、チャンスは誰に対しても開かれています。このような環境があることを、まずは知っておくのも大切なことではないでしょうか。

12 thoughts on “シリコンバレーへ行ってみて、日本の20代に伝えたいこと”

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  4. これを読んでますます自分への危機感を感じた。今から変わろう。後半部分は流石にそこまでならないと思います。シリコンバレーへ行ってみて、日本の20代に伝えたいこと http://bt.io/FMdZ

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