Text スマートブックは理想のモバイルを実現するかもしれない

2009/6/22 | 児玉 哲彦 | [] [] [] [] []

スマートブック(QualcommのPRサイトより)高校生の頃に、PDAの元祖であるNewton Message Padを使って以来、理想的なモバイルコンピュータを探しています。が、10年以上経った今でも、本当に理想的と言えるものには出会っていません。

とはいえ、スマートフォンやネットブックなどの、様々なモバイルコンピュータが出回るようになり、それらを使ううちに、モバイルコンピュータの理想型が見えてきたように思います。そして、どうやらQualcommらが提案するスマートブックが、それを具現化するかもしれません。

これまで使ってきたモバイルコンピュータを踏まえたうえで、なぜスマートブックが理想のモバイルコンピュータになり得る可能性があるのか、書いてみます。


接続性

iPhoneそもそも、なぜコンピュータをいつでもどこでも使いたいのでしょうか。

いつでもどこでも情報にアクセスしたいから?これは一つの答えです。そして、この目的であれば、今最良のソリューションはiPhoneでしょう。ネットワークへの常時接続性、大きめのスクリーン、iTunesを通じた音楽や写真の管理、Safariを通じたウェブブラウズは、考えられる多くのリソースへのアクセスを実現しています。

一方でネットブックなどのPCは、通信機能内蔵のものも増えているとはいえ、必ずしも常時接続環境を備えているわけではない点が課題となっています。

スマートブックは、通信ハードメーカーであるQualcommらが提唱していることもあり、携帯回線による常時接続が前提となっています。

入力

Aspire Oneただし、コンピュータを使う目的は情報へのアクセスだけではありません。アラン・ケイがダイナブックとして構想したように、自らコンテンツを作成し、表現し、コミュニケートすることが、コンピュータの面白さだと思っています。

その意味では、iPhoneは不十分です。その最大の理由は、タッチパネルのインタフェースは情報のブラウズには向いていても、現時点では情報の入力や加工に制約があるためです。例えばソフトウェア・キーボードの使い勝手には限界があります。また、BlackBerryのようなスマートフォンが備えているミニキーボードも、メール程度ならともかく、ブログを書く気などは起こりません。

この点では、フルキーボードやきちんとしたポインティング・デバイスを備えたネットブックやノートPCに軍配が上がります。この点で、現在自分に取って最良のモバイルコンピュータは、ネットブックのAspire Oneです。

現時点で公開されているスマートブックのリファレンス・モデルは、フルキーボードを備えています。

OS/プラットフォーム

とはいえ、現状のネットブックにも不満な点は多くあります。その最たる点は、異論もあるかもしれませんが、WindowsなどのPC向けOS/プラットフォームを用いている点です。モバイル環境に最適化されていないために、自ずからAtomなどのバッテリを食うPC向けCPUやチップセットを要求し、また起動の遅さ、小画面での使いにくさなどの問題を生じさせています。

現在提案されているスマートブックでは、Qualcomm、Freescaleやnvidiaが提供する、ARMアーキテクチャのCPUおよびチップセットを用い、またAndroid等LinuxをベースとしたOSを用いることで、現行のPCのハードよりもバッテリ持続時間や起動速度、メモリ使用量などの点で有利になります。

この点が、本質的に「安くて小さいノートPC」であるネットブックと、「大画面とフルキーボードを備えたスマートフォン」であるスマートブックを区別します。

もちろん、既存のPCの大きなソフトウェア資産が使えないことは大きなディスアドバンテージですが、JavaFlashの移植が進んでおり、またウェブアプリケーションが発展することで、こうした問題が解消していくとも考えられます。(ここでは断言は避けます。なんだかんだいってもWindowsアプリケーションが動くのは大きなメリットなので。)

バッテリ

ネットブックにおいて、PCのプラットフォームであることからくる制約の一つに、バッテリ持続時間があります。大容量バッテリーを搭載しても、5時間程度のものが多く、丸一日外で使うには不安があります。(Let’s note、一部のEee PCなどでは8〜10時間の連続可動時間を実現しているものもあります。)

スマートブックでは、PCのアーキテクチャから解き放たれることで、低消費電力を実現し、現在のスマートフォン並みのバッテリ持続時間を実現するとされています。

サイズ

次に、今のネットブックは、まだ大きすぎ、スマートフォンのように気軽に持ち歩くには至っていません。唯一、Vaio type Pはフルキーボードを備えながら可能な最小限のサイズとなっており、スマートブックにおいてもリファレンスとなるでしょう。ただし、現状ではWindows+Intel CPUという構成である点に難があります。(実際、type Pの初期モデルの最大の難点はWindowsVistaを搭載していることでした。また、画面レイアウトが最適化されていないため、文字が小さくなりすぎるなどの問題があります。)

スマートブックの中身は本質的にスマートフォンなので、画面サイズやキーボードに応じた様々なフォームファクタを、ソニーほどの技術がなくても実現できるでしょう。

まとめに変えて:Appleのスマートブックの可能性

このように、スマートブックがその約束を全て実現するなら、スマートフォンとネットブックの双方の良さを併せ持ち、これまでのモバイルコンピュータの課題を解消するポテンシャルを持っていると言えます。

ここで当然、ある企業がこの分野に参入する可能性があります。もちろん、ノートPCとスマートフォンの双方で他社の先を行く製品を作っている、Appleです。現在、iPhoneとMacBookの間に製品ラインのすき間があることが指摘されており、多くの人が大型iPod Touchのようなタブレット型コンピュータ(iPad?)の発売を予想しています。

しかし、せっかくサイズが大きくなったのに、使い勝手が悪いソフトウェアキーボードを使う必要があるでしょうか。MicrosoftのタブレットPCやOrigamiのように、これまでのタブレット型コンピュータは死屍累々です。今のコンピュータで大画面を用いてある程度以上複雑な仕事をこなそうと思えば、キーボードは必須なのです。

そして、AppleはiPhoneというスマートフォン市場において他社を先行するプラットフォームを持っています。Apple製ネットブックを予想する向きも多いですが、今の高い利幅を削って、使いづらい「ネットマック」をAppleが提供する必然性はどこにもありません。それよりは、スマートブックにiPhoneプラットフォームを広げる方が、ティム・クックCOO言うところの「面白いアイデア」に合致するでしょう。

そして、この動きは、IBMのプロセッサの開発責任者がAppleへ移籍して、iPod/iPhoneのハードウェア開発の責任者になったという事実と符合します。今のiPod/iPhoneだけであれば、より高度なプロセッサはあまり必要でないからです。

また、Androidを含むLinuxスマートブックの場合に問題になる、ソフトウェア資産の少なさについて、5万本を超えるiPhoneアプリケーションによってクリアすることができます。

このように、いろいろの状況を考えると、Appleがそう遠からずスマートブックに参入する可能性は高いと考えられます。Androidとともに、既存のスマートフォンやネットブックを超えた、理想のモバイルコンピュータを実現していってくれることに期待します。

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