2008年を振り返って

金融危機の下、世界の先行きが不透明な中、気付けば2008年ももう終わりです。ITの世界にも、自分自身にとっても、変化の大きな年でした。

今年の出来事の中で、気になったものを挙げてみたいと思います。

1.iPhone 3G

iphone-honeybeeモバイル機器が真にインターネットを活用できるようになったこと、およびそれを実現する洗練されたマルチタッチ・インタフェースによって、iPhoneは私達がモバイルに期待する水準を永久に変えてしまいました。

しかも、今年も終わり近くになって、アプリケーションがますます充実してきました。Google Mapsにおけるストリートビューのサポート、iThoughtsでマインドマップを実践する、Omni Focusによってタスクを管理する、Evernoteでメモを取る、SimCityのような本格的なゲームを遊ぶ、Ocarinaで世界中の演奏を聴くなど、その価値がどんどん高まっていきます。

今後、iPhoneに代表されるモバイル機器は、コンピュータの利便性を生活のあらゆる場面へと広げていくことと思います。PCの役割のかなりの割合は、このようなデバイスに引き継がれることでしょう。自分も、その可能性にチャレンジしていきます。

iThoughts -iPhoneでマインドマップ-
Evernoteにみるクラウド・コンピューティングの未来
iPhone Software 2.1
折れ曲がるケータイなど信じない

2.ネットブック

Aspire oneiPhoneと並んで今年のITを語る上で外せないのは、ネットブックの爆発的ヒットです。BCNによれば、国内の8〜10月に売れたノートPCのうち25%がネットブックだったそうです。

僕もAcerのAspire oneを買いました。外出先および家の中でのセカンドPCとして、ウェブやメール、ブログの更新、アイデアの整理などに重宝しています。

多くのユーザにとって最近のPCのソフト・ハードはオーバースペックです。現時点では、iPhoneのようなスマートフォンではできないことも多くありますが、キーボードとPC用OSを備えたネットブックはPC市場のかなりの割合を占めることになるでしょう。

そして、記憶容量などのスペックの限られたネットブックの台頭は、次に述べるユーティリティ(クラウド)・コンピューティングのさらなる台頭を導くでしょう。

Aspire Oneギャラクシーブラック

3.ユーティリティ(クラウド)・コンピューティング

ネットワーク接続環境およびウェブアプリケーション環境の整備、GoogleやAmazonなどによるアプリケーション・サーバの整備に伴い、ネットワーク上で実行されるアプリケーションが普及してきました。自分でも日常的にgmail、Appleのmobile me、Evernoteなどのアプリケーションを活用するようになりました。

このようなトレンドを指して、クラウド・コンピューティングという曖昧な言葉が広まっていますが、元々オンライン上の計算能力やストレージをを必要なだけ購入するなどして利用する方式はユーティリティ・コンピューティングとして明確に定義されています。

ユーティリティ・コンピューティングによって、まずは使う機器を問わずシームレスにデータにアクセスできるようになります。これは特に上述のiPhoneやネットブックのようなモバイル機器において有効です。さらに、他のユーザとのデータの共有や、複数のソースからのデータのマッシュアップなど、オフラインのアプリケーションにはないメリットも提供できます。

また、クライアント機器の管理やアップデート、システム運用などのコストが共用化によって大幅に削減できるため、特に大きなコストのかかる企業のITへの応用が期待されています。

今後のアプリケーションという意味では、モバイルとユーティリティの組み合わせに注目するべきです。

Evernoteにみるクラウド・コンピューティングの未来
ニコラス・G・カー「クラウド化する世界

4.Google goes wild

Android Dev Phone 1今年もGoogleの積極的な取り組みが目立ちました。8月に国内のストリートビュー、9月にはウェブブラウザChrome、10月にはAndroidプラットホームの初の製品である携帯電話T-mobile G1がリリースされました。

これらはいずれもウェブサービスの枠を超えた展開であることに注目すべきです。Chromeは、タブ単位でのメモリ管理、高速なJavascriptエンジンなど、アプリケーションプラットホームとしての機能を特徴としています。またストリートビューやAndroidはウェブから飛び出した実世界への展開です。

ただし、ウェブ上ならともかく、実世界までもGoogleによるデータ化および情報提供の対象とすることは、プライバシー上の軋轢も生んでいます。2009年は、果たしてGoogleがこの軋轢を乗り越え、扱う情報を実世界に広げられるのかが興味深いところです。

みんなでAndroid Dev Phone 1を買おう

5.ロストオデッセイ

僕はファイナルファンタジーシリーズが大好きです。その生みの親の坂口博信が、スクウェアを離れて、Xbox 360向けに開発したRPGです。2007年末のリリースですが、2008年初頭にプレイしました。

世界観や音楽、優れたシナリオなど、古典的なFFの良かった点が最新のハードのクオリティで実現されており、心に深く残るタイトルです。昔のFFが好きだった、あるいはXbox 360を持っている人には、ぜひともプレイしてほしい一本です。

ゲームのスタイルも典型的な和製RPGのもので、近年の自由度やインタラクティビティの高いRPGからすると古典的にも見えます。しかしゲームシステムやバランスの完成度は高く、工夫をしないと戦闘に勝てない絶妙な難易度になっています。

ファイナルファンタジーシリーズは、ゲームを表現のメディアにするという夢を追いかけたシリーズでした。その夢は、本作において一つの完成を見たように思います。

ロストオデッセイ

6.ジャパニーズ・ヒップホップ

日本のヒップホップというとEAST END×YURIの「DA YO NE」みたいなものか、あるいはキングギドラのようなものを想像するかもしません。しかし、近年盛り上がっているハウスのシーンとクロスオーヴァーした、新しい日本のヒップホップが生まれてきました。

まずは、今乗りに乗っているShing02。以下に挙げる様々なアーティストとのコラボレーションを通じて、シーンを盛り上げる立役者です。その活動を通じてブレない音楽に対する真摯なスタンスは、ジャンルを超えてリスペクトに値します。

次に、hydeout productionsを設立したnujabes。ハウス好きが聴けるヒップホップを生み出しました。このジャンルの入り口としては、まずnujabes+Shing02の「Luv (sic)」の1〜3を聴いてみてください。

今最大の注目株は、若干23歳のトラックメーカーEccy。1st アルバム「Floating Like Incense」はその大器を感じさせます。

最後に、Shing02とPismoの合作「Velodrome」のリミックスで一躍有名になったnomak。日本の伝統文化を感じさせるスピリチュアルな世界観を感じさせてくれます。

hydeout productions / nujabes
Shing02
Eccy
nomak