「エクサバイト」服部真澄

僕は、ウェブの次に来るITのメガトレンドはライフログだと考え、活動してきました。今年に入って、ついにライフログをテーマにした小説「エクサバイト」が刊行されています。遅ればせながらながら読んでみました。

作者は服部真澄です。おそらく初めてのSF小説でしょう。ですが、「龍の契り」などの社会的テーマを扱った硬派なサスペンスで知られる作家だけあり、東大のライフログの第一人者廣瀬先生らの協力の下、個人の全ての経験が記録される社会の姿を生き生きと描き出しています。未来予測としても、充分に楽しめます。

が、この小説の意義は、ライフログ=個人が人生の記録を残すことが、利便性のために行われるのではなく、子供や自らの仕事の成果のように、後世まで自らの存在を残したい、という人間の根源的な欲望であると示したことにあります。私がライフログが普及すると考えるもの、ネットやケータイが人の「つながり」に対する欲望を満たすのと同じくらい、もしくはより強い欲望を叶えるからです。

そのような人間の業の行き着く先を、この小説ではITの枠から外れた恐ろしい形で描き出します。ぜひ皆さん自身で、その結末を確かめてください。