Text 未来のキャンパスを通じて次世代の情報インフラを考える

2007/12/6 | 児玉 哲彦 | [] [] []

このエントリーは主に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の関係者に向けて書いています。

私の在籍するSFCは、かつて無線LANによるオープンなインターネット接続をいち早く導入したことで高い注目を浴びた。それがありふれたものになってきた昨年、慶應は150周年記念事業の準備の真っ最中だった。それを機会に、キャンパスの次世代情報インフラを作ろうという気運が盛り上がっていた。私はたまたまIDアゴラという任意組織のチェアマンを務めており、次世代インフラの議論のとりまとめを依頼された。

その際に考えたのは、学生の研究/課外のあらゆる活動の成果を収集し、関係者が簡便に閲覧することができるポートフォリオ・キャンパスというコンセプトだ。

私自身、iPodを利用して制作物のデモビデオを見せることや、自分の研究活動をブログで公開していくことによる知的生産やコラボレーションの促進を実感している。このような、活動成果を一元管理することで、成果の共有と自己評価を支援するポートフォリオ学習が脚光を浴びている。それを支援するデータ入力装置や共通データベース、閲覧ツール等がキャンパス全体に張り巡らされることを想定していた。

結果的には、このコンセプトを担当の先生方にうまく伝えきれなかったこともあり、提案は実らなかった。150周年記念事業としては、未来創造塾という宿泊施設が建設されることになった。またキャンパス内のあらゆる場所にRFIDリーダーを埋め込み、RFIDタグで物を識別するBelugaプロジェクトも進められている。これらは、キャンパス情報インフラの正当なアップグレードとして理解できる。

だがここで、今となってみると、自分自身も提案を行っていた時点では理解しきれていなかった重要性が、ポートフォリオ・キャンパスというコンセプトには内包されていたように思う。それは、次世代の情報インフラというのは、必ずしも上述のようなハードの部分に限定されるのではないということだ。

Web 2.0という言葉を発明したティム・オライリーは、「Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル」において以下のように述べている:

データは次世代のIntel inside

これは、オープンネットワークの環境下では、どれだけ多様なデータ、特に利用者の行動についてのデータを集約できるかが、情報システムの価値を決定するということだ。Googleの競争力の源泉は、梅田望夫氏が「ウェブ進化論」で述べた通りそのサービスを下支えする巨大なバックエンドにある。それは言い換えれば、各種の利用者のデータを統一的に処理できるデータのインフラを構築していることだと言える。

例えばBelugaのRFIDの情報も、単体では大きな価値を生み出すことは難しい。あるヒトやモノの在処が、そのヒトの持つソーシャル・ネットワーク、これまでの活動履歴等の情報と結合されて、初めてサービスの付加価値が高まるのではないか?そして、そのような情報の結合を、一つのプレイヤーだけでまかなうことは困難なうえ危険だ。であるならば、大学の人間に関する各種のメタデータと、またセンサーやカメラによって取得される環境情報とを、各種のプレイヤーが様々な方法でデータベース化し、それらのデータを統合するためのインフラを構築することこそが、キャンパスの次世代の情報インフラとして求められるのだ。

もっとはっきり言ってしまえば、学生のレポートから研究会での研究活動、またサークル等の課外活動から人間関係まで含め、全てをデータ化することを目指す。全ての学生及び教職員は、そのことに納得した上でキャンパスでの活動を行う。それらの情報を用いて、SFCのキャンパス外では実現不可能な高度なユビキタス・サービスを実現してゆく。プライバシーの確保については、その実現方法そのものが実践的に研究されていく。

これくらいやってこそ、今回のOpen Research Forum 2007のテーマでもあった、eXtremeな存在としてのSFCという理念に近づけるのではないかと考える。

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